今年の始めにアロマによる認知症対策の勉強編をご紹介して、実践編は少し時間が経ってしまいました。
具体的に、どんな精油が認知症に効くの? どのように使ったらいいの?
そんな疑問に対して、いくつかの提案をしたいと思います。
ヒントになるのは、勉強編でご紹介した鳥取大学の研究です。
アルツハイマー病を含む高齢者に、毎朝ローズマリーカンファーとレモンの精油を、夜は真性ラベンダーとオレンジスィートの精油をアロマディフューザーによる芳香浴で、それぞれ2時間ずつ28日間のアロマ療法を行いました。
朝に用いたローズマリーカンファーとレモンの精油は、交感神経を刺激して体を活動的な状態にして、集中力や記憶力を強化する作用が期待できます。
また、就寝前に使用したラベンダーとオレンジスィートは、鎮静作用があり、副交感神経が優位になることで不眠や不安の改善を促しました。 昼と夜に異なる精油を用いたのは、一日の生活リズムが、昼間は活動的に、夜は安心して眠りにつけるようにと調整するためです。
その結果、特にアルツハイマー患者に特有の見当識(場所や時間、自分が何者であるかを把握すること)に改善が見られました。
最近の調査結果では、昼間に交感神経を刺激する精油だけでも、認知症に効果があることがわかっています。
現在エビデンス(科学的な裏付け)があるのは上記の精油です。
それ以外では、2020年に秋田大学の高橋裕哉氏らの研究で、スギの芳香成分がアルツハイマー型認知症の改善に効果が見られたとの報告があります(アロマ環境協会誌「AEAJ」№96)。
レモングラス他、柑橘系の香りも認知症の改善効果があることもわかっているようです。
鳥取大学の調査ではアロマディフューザーを使用したようですが、予防のために日々の生活に用いるには、もっとお手軽な方法もあります。
お勧めは、写真のようなアロマ用のストーン。1枚目の写真右は生活の木、左の石は無印良品のもので、私がだいぶ前に購入したものです。
最近では、もっとお洒落で香りの拡散効果が高いストーンやアロマウッドが販売されています(2枚目の写真のディフューザー
の手前にあるのがアロマウッド)
施設にいた頃の母の部屋には、露骨にストーン等を置くのは憚られたので、ローズマリーカンファーとレモンの精油をブレンドしたルームスプレーを持参して、部屋にシュシュッと香りを漂わせたりしていました(写真左)。
他の方法としては、トリートメントオイルでマッサージしたり、バスソルトに精油を1~2滴落として混ぜ合わせ、それをバスタブに入れて、ゆったりと浸かるのもいいですね。
もっともお手軽なのは、マグカップなどにお湯を注ぎ、精油を1~2滴たらして、近くに置いておく、もしくはティッシュペーパーに精油をしみ込ませ、置いておくこと。
香りを持ち歩きたい方には、中に香りをしみ込ませるペンダントタイプのものも販売されています。インターネットで「アロマペンダント」を検索してみてください。
精油には、脳を活性化する効果があるもの、鎮静化する効果があるもの、活性化と鎮静の両面の効果があるものがあります。その他にも、すべての精油にさまざまな効用があります。
認知症予防として、現在証明されているのは上記の精油ですが、私自身は、「自分で嗅いでみて、気持ちよく感じる」ことが一番だと思っていますので、いろいろブレンドします。
母には、血行をよくするローズマリーと、老廃物を流し、スキンケアやメンタルにもよいゼラニウムをブレンドしたトリートメントオイルでマッサージしていました。
オイルを使うのは、足から膝まで、手から腕までのマッサージ。必ず鼻からも香りが入るようにしました。マッサージが終わると、ほんのり顔がピンク色になります。
介護士さんたちにも良い香りに癒される~と喜ばれました。
アロマの香りは、記憶を司る海馬を刺激するだけではありません。脳の視床下部に直接働きかけることで自律神経やホルモンのバランスも整えてくれます。大脳辺縁系の扁桃体では情動に働きかけるので気分を快適にしてくれます。緊張がほぐれ、気持ちが落ち着き、心身共にリラックスできることが脳内回路を健やかに保つことに役立っています。
興味のある方は、ぜひ自分が心地よいと思える好きな香りを探してみてください。
上記以外で人気があって、脳の活性化とリラックスに効果のある香りは、ベルガモットやグレープフルーツなどの柑橘系の精油、カモミールローマン、ユーカリ、サンダルウッド、シダーウッド、ローズウッドなど。
朝用、昼用とテーマ毎にいくつかの精油がブレンドされているものもあります。
<参考文献>
●<香り>はなぜ脳に効くのか―アロマセラピーと先端医療(塩田清二著・NHK出版部)
●健康長寿ネット・認知症のアロマ療法(公益財団法人健康長寿科学振興財団HP)
●認知症とアロマセラピー(鳥取大学発ベンチャー(株)ハイパーブレインHP)
●公益社団法人アロマ環境協会HP
●アロマ環境協会誌「AEAJ」
Комментарии