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執筆者の写真ミウラ

加齢に伴う尿もれ、頻尿問題②

更新日:2023年7月25日

排尿の仕組みや尿もれの原因についてお話しします。


尿もれ(尿失禁)には、原因やもれ方によって、4つに分けられます。

①腹圧性尿失禁

②切迫性尿失禁

③溢流性尿失禁

④機能性尿失禁

このうち最も多く見られるのが①と②です。


こんな時にもれる

A群 

・くしゃみ、咳

・大笑い

・立ち上がった瞬間

・重いものをよっこいしょと持ち上げた時

・飛び跳ねる

B群

・帰宅時、突然尿意をもよおす

・手を洗っている時、突然尿意をもよおす

・トイレまで間に合わない


皆さんはいかがですか? 

多くの方が、一つくらいは経験があると思います。

A群が①の腹圧性尿失禁で、尿失禁の女性の半分以上を占めています。

特に40歳以上の人、2回以上出産経験のある人、太っている人は起こしやすい傾向があるようです。

B群が、次に多い②の切迫性尿失禁

急に尿意がわき起こり、すぐに行かないと間に合いません。

こうなると生活は不便ですし、不安も大きくなります。

②に①が合併する混合性尿失禁もあり、この3つのタイプが女性の尿失禁のほとんどを占めています。

ちなみに、③は、尿の排出がうまくいかないために起こります。

糖尿病が進行して膀胱の収縮がうまくいかなくなるケースや、前立腺肥大症になった男性によく見られるケースなど。

④は脳梗塞などで手足の運動機能に障害があったり、認知症でトイレの場所がわからなくて間に合わない尿失禁です。


排尿の簡単なメカニズムを知っておきましょう。

日大医学部泌尿器科学系主任教授の高橋悟先生の「我慢しないで!女性の頻尿・尿失禁」(日刊スポーツコラム)から一部抜粋します。


「まず、腎臓が全身から集められた血液をろ過。必要な成分は再吸収され、最終的に不要になったのが尿となります。こうして腎臓で作られた尿は尿管へと送り出され、膀胱に送られます。

膀胱は伸び縮みする袋のような臓器で、尿をためる機能と排せつする二つの機能を持っています。我慢すれば500mlほど尿をためられますが、通常は250~300mlほどたまると『いっぱいになったよ』という信号が膀胱から脳に送られます。これによって尿意が起こり、トイレに行くのです。準備OKとなると『よし、出していいよ』という信号が今度は脳から膀胱と尿道に送られます。そこで尿道が開き、同時に膀胱がポンプのように収縮して尿を押し出す仕組みなのです」

尿道の周りには内尿道平滑筋という平滑筋と、外尿道括約筋という横紋筋があり、前者は自律神経の範疇なので自分の意思では動かせませんが、後者は手足の筋肉と同じで自分の意思で動かせます。

尿がある程度膀胱にたまると脳に信号が送られ、尿意が起こります。

しかしトイレに行けない時は「今出したらダメ」という指令が脳から膀胱と尿道に送り返されるのです。

ここで、もらさないように頑張ることができるのが、自分の意思で動かせる外尿道筋と骨盤底筋群の連携による締める力なのです。


女性に最も多い①の腹圧性尿失禁は、この締める力が緩みます。

膀胱も尿道もグラグラと不安定な状態になり、下がったり、後ろの膣側に倒れこんでしまいます。

そうなると膀胱の出口は開きやすくなり、尿道括約筋の機能も衰えていますから締める力も十分には働かなくなり、腹圧がかかった時に尿が出ようとする力を制御できなくなるのです。

骨盤底が緩む最初の原因は、大きな負担がかかる妊娠・出産時。

しかし、ほとんどの妊婦の伸び切った骨盤底筋は、出産後4カ月ほどで元に戻ります。

ただし、一度傷めてしまった筋肉はその後加齢とともに緩みやすくなるため、出産経験の多い経産婦ほど腹圧性尿失禁のリスクが高いとも言われています。

更年期になると女性ホルモンの分泌が低下します。

なかでもエストロゲンには、尿道の筋肉やその周りの骨盤底筋にハリをもたせる働きがあり、分泌が減ることで弾力がなくなり、加齢による体全体の筋力の衰えも重なって、骨盤底の緩みは加速していきます。


②の過活動膀胱による切迫性尿失禁は、「今出したらダメ」と待ったをかける膀胱と脳との信号のやりとりがうまくいかず、勝手に膀胱が収縮して出してしまいます。

脳卒中の後遺症やパーキンソン病など脳やせき髄の障害が原因の病気や、膀胱炎等の膀胱の障がいが原因で起こるケースが20パーセント。

残りの80パーセントは原因がよくわかりません。脳にも膀胱にも異常がないのに、加齢や骨盤底筋の緩みなど、いくつかの原因が重なって引き起こされていると考えられているようです。



私たちの骨盤の中には図のように、消化器、生殖器、泌尿器といった大切な臓器が収まっていて、それぞれが重要な役割を担っています。

後ろから順に、直腸、子宮、膀胱のそれぞれの出口である肛門、膣、尿道を薄いハンモック状

の筋肉群で下から支えているのが、一番下にある骨盤底筋群です。

腹腔・骨盤腔を下方から閉じることで腹腔と骨盤臓器全体を支持し、負荷を支えているのです。


骨盤底が弱る原因で問題なのは、更年期以降の女性に起きる女性ホルモンエストロゲンの低下と加齢による筋肉の弱体化です。

骨盤底の緩みは尿もれだけにとどまらず、骨盤内の臓器が下がることで腰痛や便秘、肥満などの不調にもつながり、さらには臓器脱や便もれなどを引き起こすこともあります。


筋肉には、自分で動かせる随意筋と、自分の意思で動かせない不随意筋がありますが、骨盤底筋群は骨格筋ですから、本来は自分で収縮することができる筋肉です。

弱りやすい骨盤底筋を引き締めるトレーニングを継続することで、①の腹圧性尿失禁の多くは改善が見られます。②の切迫性尿失禁と混合性尿失禁についても効果は期待できます。

しかも、体幹を胴体の一番下で支えるインナーマッスルでもありますから、骨盤底のセルフメンテナンスは骨盤内で起こるさまざまな不調を改善し、老後のQOLを豊かにすることにつながります。


ところが、骨盤底筋群は小さくて薄い筋肉のため、収縮することを自覚しにくい筋肉でもあるのが悩ましいところ。

次回は、この問題を解決しつつ、弱体化する骨盤底筋群を強くするためには何をしたらよいかについてお話しします。


<参考資料>

「我慢しないで!女性の頻尿・尿失禁」(日刊スポーツコラム、日大医学部泌尿器科学系主任教授 高橋悟)













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